【5分で分かる!】『芝浜』のあらすじから聴きどころまで。試しに聴けるサービスも紹介。

芝浜

日本の伝統芸能「落語」を嗜むうえで知っておきたい名作・定番演目を紹介!

今回は、人情噺の大定番『芝浜』(しばはま)について、あらすじや登場人物、楽しむための豆知識をわかりやすく解説します。

記事の最後には、試しに聴いてみるためのサービスも紹介していますので、ぜひご覧ください。

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大人の嗜みの入口として、「わかった気になる」を応援する情報を発信しています。

日本の伝統芸能「落語」。そこには磨き抜かれた知性と、今も昔も変わらない人間の機微が満ち溢れています。

落語を楽しむことは、江戸の文化や価値観を知ること、人間の滑稽さや強かさ(したたかさ)を再確認すること、人を惹きつける物語や話し方とは何だろうと考えてみること、です。

そんな大人の嗜みとしての「はじめての落語」を応援するため、落語に関する基本的な知識やおすすめの名作落語を、初心者の方にもわかりやすく紹介します。

すぐに『芝浜』を聴きたい方はすぐに聴けるYouTubeや音楽配信サービスをどうぞ

『芝浜』(しばはま)とは?

芝浜とは

芝浜(しばはま)』は、魚屋の勝五郎とその女房の絆を描いた有名な人情噺です。

多くの名人が十八番とした定番演目であり、可笑しさだけではない落語の魅力がギュッと詰まった古典落語の傑作のひとつです。

舞台、登場人物、あらすじ

芝浜の概要

≪舞台≫

・勝五郎の家

・芝の浜辺

≪主な登場人物≫

・勝五郎

・女房

≪あらすじ≫

魚屋の勝五郎は、ちょっとしたきっかけから商いに出なくなり、昼間から酒ばかり飲んでいる。見かねた女房に急き立てられ、「今晩思う存分飲ませてくれれば明日から商いに出る」と約束する。

翌朝、早朝に女房に叩き起こされ、渋々ながら芝の魚市場へ向かう。しかし市場は閉まっており、女房が時を一刻間違え、早く起こされたことに気付く。勝五郎は憤慨しながらも、時間を潰すために砂浜に下りる。ふと見ると、海岸に革の財布が落ちている。中には見たこともないような大金が詰まっており、勝五郎は財布を懐に入れ急いで家に帰る。

家に着いて勘定してみると、財布には42両もの大金が入っていた。これで商いに出ずとも遊んで暮らせると、勝五郎は大はしゃぎ。前日に飲み残した酒をあおり、夕方に起き出して銭湯へ。帰りには大勢の友人連れてきて大宴会。そのまま、なんとも良い気分で眠りにつく。

翌朝、「早く商いに行って」と女房に起こされる。「昨日芝の浜で拾った42両があるのだから働く必要はない」と勝五郎は言いますが、女房は何のことだかわからないと言う。昨日あなたは芝の浜になんて行っていない。夕方に起きて銭湯に行って、何がめでたいのか友人を呼んで酒盛りをしただけ。夢でも見ていたのではないか、と言われる。勝五郎は、「働かないで酒ばかり飲んでいたいと考えているから、そんなどうしようもない夢を見たのだ」と深く恥じ入り、愕然とする。この日から酒を断ち、真面目に働くことを誓う。

勝五郎は元々腕の立つ魚屋であることから、真面目に働きだすとすぐにお得意様を取り返し、どんどん商いは軌道に乗っていく。それから3年の間に、裏長屋を出て表通りに立派な店を構え、奉公人を抱えるまでになる。

3年目の大晦日。掛け取りに急かされることもなく、取り替えた新しい畳の匂いに包まれ、福茶を飲みながらゆったりと過ごす勝五郎と女房。あとは新年を待つばかりの勝五郎に、女房が「聴いてほしい話がある」と切り出す。女房が取り出したのは、いつかの革の財布。実は3年前の出来事は夢ではなく、ずっと騙していたのだと涙ながらに打ち明ける。人様のものに手を付ければ勝五郎が罪人となってしまうと考えた女房は、大家に相談のうえ拾った財布をお上に届け、勝五郎には必死で「夢でも見たのだ」と言い聞かせた。しばらくの後、届けた財布は落とし主が現れず、女房の手へと下げ渡しとなった。女房は、夢と言ったのは嘘だったとすぐに打ち明けたかったが、必死で働く勝五郎に水を差してはいけないと、罪悪感を抱えながらこらえ続けてきたと言う。

話を聞いた勝五郎は、女房に感謝の言葉を伝える。辛い思いをさせてすまなかった。騙される方は楽なもんだ、騙されていればいいのだから、と。

3年前とは別人になり、自らの働きで財を成した勝五郎に、女房は久しぶりに酒をすすめる。

勝五郎は感無量の表情で盃を口元まで持ってくるが、そこで動きが止まる。

≪オチ≫

女房 「どうしたの?飲まないのかい?」

勝五郎 「やっぱりよそう。また夢になるといけない。


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『芝浜』の聴きどころ

芝浜の聴きどころ

『芝浜』は、幕末から明治にかけて活躍した初代 三遊亭圓朝が、「酔っ払い」「芝浜」「財布」の3つのお題をもらって創作した三題噺がその原型と伝えられています。

三題噺とは、寄席で落語家が客から三つのお題を貰い、それらを絡めてその場で作る即興の落語のことを指します。

その後、三代目 桂三木助が細部まで改良を加え練り上げたものが、現在の『芝浜』の演目となっています。

『芝浜』は、古今亭志ん生立川談志三遊亭円楽(元・楽太郎)などが十八番としたことでも有名な噺です。 夫婦の情愛を描いたサクセスストーリーであり、全編をしっかりと演じると1時間近くにもなる長尺の演目で、良質な短編映画を見ているような気分にさせてくれる古典落語の傑作演目です。

『芝浜』は聴きどころの多い噺ですが、何といっても勝五郎の人間的な成長と、勝五郎を想う女房の心情が胸に迫る噺となっています。

「ダメな亭主と出来た女房」というのは落語ではよく見られる構図ですが、この夫婦のキャラクターをどう演じるかは、噺家により様々な解釈がある点も面白みのひとつとなっています。

勝五郎について、とにかくグウタラな亭主なのか高圧的なのか、心のどこかでは今の状況を脱却したいと考えているのか。

女房については、しっかりしすぎて口うるさいのか、控えめながら真剣に勝五郎に向き合っているのか、などなど。

こういったキャラクター設定の違いにより、噺の細部に異なったアレンジが施されることになりますので、何度聴いても飽きない定番演目となっています。

楽しむための豆知識

芝浜の豆知識1

『芝浜』をより楽しむため、背景や噺の中に出てくる言葉やをいくつか解説します。

  • 芝浜ってどこ?
    噺の舞台である「芝の浜」とは、現在の東京都港区の南部、本芝公園のある辺りを指します。
    江戸時代の主要な魚市場は二つあり、ひとつは日本橋、もうひとつがであったと言われます。は主に江戸前(東京湾)の小魚を扱っていたことから雑魚場とも呼ばれていました。
    芝では朝と夕の一日2回の市が立ち、新鮮な江戸前の魚は「芝肴」と呼ばれ重宝されていました。
芝浜の豆知識2
  • 棒手振りの魚屋
    冷蔵設備のなかった江戸時代は、毎日行商人が市場から魚を仕入れ、鮮度が落ちないうちに売り歩くというスタイルで商いを行っていました。
    盤台と呼ばれる木製の容器を紐で吊るし、天秤の要領で前後に売り物を担いで売り歩くスタイルを棒手振り(ぼてふり)と呼びます。店を構える前の勝五郎もこの棒手振りで商いを行っていました。
  • 切通しの鐘
    勝五郎が時を間違えたことに気付く場面で鳴っているのが、時を告げる「切通しの鐘」。(噺家によっては、「増上寺の鐘」と演じる場合もあります)
    現在はもうありませんが、当時は増上寺と青松寺の間にある「切通坂」という道に時を告げる鐘があったと言われており、その道の名前から「切通しの鐘」と呼ばれ、庶民にも親しまれていたようです

すぐに聴けるYouTubeや音楽配信サービス

今すぐ『芝浜』を聴いてみたい!という方のために、YouTubeで聴けるもの、音楽配信サービスで聴けるものを紹介します。

特にAmazon Music Unlimitedで聴ける柳家さん喬さんの一席はとてもおすすめなので、ぜひチェックしてみてください。

YouTube 立川談志の一席

YouTubeチャンネル公式立川談志 落語&ドキュメント by 竹書房」より。

近代落語の風雲児である立川談志さんは『芝浜』の名手のひとりとして知られています。

2011年に75歳で亡くなった際にも、TVの追悼番組で「談志の芝浜」が何度も放送され、落語に馴染みのない方にも『芝浜』が広く知られるきっかけとなりました。

勝五郎、女房どちらもこれ以上ないくらい人間臭いキャラクターに仕上げられており、登場人物のセリフひとつひとつが味わい深い一席となっています。

Amazon Music Unlimited 柳家さん喬の一席

Amazon Music Unlimitedでは、柳家さん喬さんの『芝浜』を聴くことができます。

芝浜は、特に前半で「酒飲みのどうしようもない亭主」と「口うるさい女房」というキャラクターを強調して演じられることが多い演目です。

その方が、後半の勝五郎の変わり振り女房の知られざる心情とのギャップを際立たせることが容易なためと思われます。

一方で柳家さん喬さんは、そういった過剰なキャラ付けがされていない落ち着いた勝五郎と女房を演じています。

噺の冒頭から、女房には勝五郎を心から案じる献身さが見え、勝五郎にもひとりの商人としての職業倫理のようなものが見え隠れしています。

そのため、後半における勝五郎の商業的成功や女房の打ち明け話の切実さにとてもリアリティがあり、じんわりと胸に迫る物語に仕上げられています

個人的には、3年後の大晦日、売掛金を回収できなかった奉公人に勝五郎が諭す場面が、勝五郎の人間的な深みを感じられるシーンとしてとても好きです。

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おわりに

今回は人情噺の名作『芝浜』について解説しました。

わかった気になっていただけましたでしょうか?

本記事で興味を持っていただけた方は、ぜひ奥深い「落語の世界」に足を踏み入れてみてください。

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