今回は、アイリッシュウイスキー界の不動のナンバーワンブランド「ジェムソン」を紹介します。
3回蒸留のポットスチルウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドしたバランスのとれたなめらかな味わいで、多くのファンを獲得している銘柄です。
すぐにジェムソンの商品情報を知りたい方は「ジェムソンの種類と価格」をどうぞ
「ジェムソン」とは?
「ジェムソン」は、アイルランドのコーク市で製造されているアイリッシュブレンデッドウイスキーです。
まず目を引くのがそのラベル。中央に帆船と紋章が描かれています。
これは、ジェムソン家の先祖が勇敢に海賊と戦い勝利を収めた証としてスコットランド王から授かった紋章です。
その下に書かれた「SINE METU(シネ・メトゥ)」という言葉は「我に恐れるものなし」という意味のラテン語で、ジェムソン家の家訓でもあります。
勇敢なる精神をもって、世界有数のブランドまで成長を遂げたジェムソン。その歴史と特徴を解説していきます。
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ジョン・ジェムソンの挑戦
ジェムソンの歴史は、スコットランド出身の実業家ジョン・ジェムソンが、妻の親族が保有するアイルランドのボウ・ストリート蒸留所の経営に参画したことからはじまります。
ジョン・ジェムソンは故郷スコットランドで州長官まで務めた人物ですが、当時ウイスキー生産の中心地だったアイルランド ダブリンへ渡り、新たな挑戦を始めました。
経営へ参画した1786年の蒸留所の生産量は年3万ガロンでしたが、彼は同蒸留所を、19世紀になる前までに年間生産量100万ガロンを誇るアイルランド最大のウイスキー会社へ成長させました。
ジェムソンは現在、単一の蒸留所で生産されるウイスキーとして世界第3位の生産量を誇り、アイリッシュウイスキーにおける世界のマーケットシェアの70%を占める圧倒的なブランドとなっています。
アイリッシュウイスキーの苦難
順風満帆に見えるジェムソンの歴史にも、多くの逆境がありました。
特にアイルランド独立戦争とアメリカ禁酒法による影響は大きく、アイリッシュウイスキー全体にとって苦難の歴史となりました。
1919年に始まったイギリスからの独立をめぐるアイルランド独立戦争は、1921年にアイルランド自由国の成立をもって終結しましたが、イギリスへのアイリッシュウイスキー輸入禁止という貿易摩擦を引き起こしました。
さらにその後、輸出先として依存を高めていたアメリカにおいても、1930年代まで続く禁酒法が施行され、ジェムソンを含むアイリッシュウイスキーは国際的な巨大市場を次々と失なうことになりました。
実際にこの時代、多くのアイルランドの蒸留所が閉鎖に追い込まれています。
統廃合を経て、再興へ
低迷を続けていたジェムソンですが、1960年代から徐々に復興の道を辿ります。
ジェムソン社は1966年、ライバルでもあったジョン・パワーズ社と合併し、アイリッシュ・ディスティラーズ・カンパニー(IDC)を設立しました。
200年の歴史を誇るダブリンの蒸留所を閉鎖し、コーク市のミドルドン蒸留所に製造設備を集約、現在は1975年に竣工した新ミドルドン蒸留所において製造が行われています。
新ミドルドン蒸留所では、ジェムソンのほか、パディー、パワーズ、レッドブレスト、グリーンスポットといった有力ブランドも製造されています。
このような統廃合に加え、アイリッシュウイスキー独特のポットスチルが生むなめらかで穏やかな味わいが世界のウイスキーファンに再発見されたことも大きな要因となり、現在アイリッシュウイスキーは、世界五大ウイスキーの一角の地位まで再興し、ジェムソンがその中心を担っています。
オイリーでなめらかな味わい
ジェムソンは、伝統的なアイリッシュといわれる「ポットスチルウイスキー」とグレーンウイスキーをブレンドして造られています。
ポットスチルウイスキーは、大麦麦芽と未発芽の大麦、その他穀物を原料とし、ポットスチルと呼ばれる蒸留器で3回蒸留を行うことことで造られます。
原料の穀物を石臼のような設備で粉砕することで生まれるオイリーなフレーバー、蒸留を3回繰り返すことで実現するなめらかで軽い酒質が特徴のポットスチルウイスキー。その魅力を受け継いだジェムソンは、初心者から愛好家まで万人に愛されるなめらかな口当たりが魅力の銘柄です。
ジェムソンの種類と価格
ジェムソンの主な種類は以下のとおりです。
今回は特におすすめの2銘柄について紹介します。
ライトボディでなめらかな大変飲みやすい銘柄ですので、初心者の方も安心してトライしてみてください。
まずはこれから
ジェムソン スタンダード
≪特徴≫
ジェムソンのスタンダードボトル。オイリーでしっかりとした飲み心地でありながら、なめらかで後味もスムーズ。
リーズナブルな価格も魅力で、時と場所を選ばず気軽に楽しめる銘柄。ぜひご自宅の常備ボトルのひとつに。
≪味わい≫
スパイシー、ナッツ、バニラの香りの絶妙なバランスの中に、シェリーの甘味がほのかに混ざり、素晴らしくなめらかな味わい
≪飲み方とおつまみ≫
オン・ザ・ロックスでも抵抗なく飲める軽さだと思いますし、爽やかにハイボールでも良いと思います。
フライや豚肉のローストなど、少し脂っぽいものを食べる際のお供にするのがおすすめです。
一度は試してみたい
ジェムソン ボウ・ストリート18年
≪特徴≫
ジェムソン誕生の地であるボウ・ストリート蒸留所へのオマージュとして造られたボトル。現在、ダブリンで熟成されている唯一の銘柄。
コークのミドルトン蒸留所で3回蒸留、ヨーロピアンオーク樽とアメリカンオーク樽で18年以上熟成した3種類のウイスキーをブレンド。
それをダブリンのボウ・ストリート旧蒸留所でファーストフィルバーボン樽に移し替えて後熟させ、カスクストレングスで瓶詰めした希少なボトル。
ジェムソンらしいスムースさでありながら、トフィーとオークの複雑な味わいが特徴。高価ですが、いつか試してみたい逸品。
≪味わい≫
香りに続くトフィーとオークの味わいと共に、レザーとバニラがほのかに漂い、さらにシェリー由来のわずかなナッティさが芳醇さと複雑さを醸し出す
≪飲み方とおつまみ≫
“濃い”味わいを楽しみたいので、ストレートがおすすめ。個人的にはスイーツと合わせるのが好きです。
おわりに
今回は“№1アイリッシュウイスキー” 「ジェムソン」を紹介しました。
わかった気になっていただけましたでしょうか?
実際に嗜んでみてわかることもたくさんありますので、興味を持っていただいた方はぜひお試しください。
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