今回は、世界で最も飲まれているスコッチウイスキー「ジョニーウォーカー」を紹介します。
“世界一有名な英国紳士”といわれる「ストライディングマン」を描いたボトルデザインが印象的。様々な文学作品や映画にも登場しており、誰しも一度は目にしたことがあるのではないでしょうか?
ジョニーウォーカーが世界一のウイスキーブランドに至るまでの道のりには、魅力的なエピソードが溢れています。
グラスを傾けながら、ぜひ一緒にそのストーリーを辿ってみましょう。
すぐにジョニーウォーカーの商品情報を知りたい方は「ジョニーウォーカーの種類と価格」をどうぞ
「ジョニーウォーカー」とは?
「ジョニーウォーカー」は、スコットランドのキルマーノック発祥のブレンデッドスコッチウイスキーです。
日本でも「ジョニ赤」「ジョニ黒」「ジョニ金」「ジョニ青」などの愛称で親しまれています。
現在世界一の販売数を誇るスコッチウイスキーで、その出荷ボトル数は年間1億本超、世界で飲まれるスコッチの5杯に1杯はジョニーウォーカーといわれる圧倒的なブランドです。
様々なラインナップを揃えるブランドですが、その味わいは総じてクセが少なく飲みやすいので、ウイスキー初心者の方にもおすすめできる銘柄です。
そもそもブレンデッドウイスキーってなに?という方は、以下の記事もおすすめです。
創業者ジョン・ウォーカー
ジョニーウォーカーの歴史のはじまりは、約200年前にさかのぼります。
1820年、当時14歳のジョン・ウォーカーは、亡くなった父親から受け継いだ農場を売却し、その資金を元手にスコットランドのキルマーノックに食料雑貨店を開業しました。
若くして一家の大黒柱として店を切り盛りするジョンは、様々なアルコール飲料を販売して利益を上げながら、自身でも蒸留所を開設するなど、徐々にウイスキー販売を事業の中心にしていきます。
ウイスキーの品質と供給量の安定を目指したジョンは、取り扱っていた紅茶やスパイスのブレンディングにヒントを得て、他の蒸留所のモルト原酒を取り寄せてブレンド(ヴァッティング)することを思いつきます。
このヴァッテッドウイスキーが好評を博し、その後のジョニーウォーカーの歩みの第一歩となりました。
複数のウイスキーをブレンドすることで生まれる複層的な味わいが高い評価を得たことはもちろんですが、ブレンドによる品質と供給量の安定化こそが、その後のジョニーウォーカーの大量生産・大量流通を支える画期的なアイディアであったといえます。
二代目アレキサンダーによる躍進
創業者ジョン・ウォーカーの死後、息子のアレキサンダー・ウォーカーが事業を引き継ぎました。
ブレンデッドウイスキー製造の基礎を築いたのは創業者のジョンですが、それを世界的なブランドにまで引き上げたのは二代目アレキサンダーの功績であるといわれます。
アレキサンダーが事業を引き継ぐ頃、英国は産業革命の時代であり、キルマーノックにも鉄道が開通していました。
これを広域流通の好機と捉えたアレキサンダーは、ブレンデッドウイスキーの生産設備を拡充するとともに、流通販売網の整備に注力しました。
彼は遠方へ航海する大型船の船長とのコネクションを作り、自社のウイスキーを渡航先に届けるアンバサダーとして協力を得ることで、当時船で行ける多くの場所へと販売網を拡大することに成功しました。
四角形のボトルと斜めのラベル
流通販売のエリアを広げる中で、現在まで続く革新的な2つの工夫が生まれます。
ひとつは、ジョニーウォーカー独特の四角い形状のボトルです。
これは輸送の際、荷箱の中の隙間を減らすことで、大量輸送を可能にするとともに、船の揺れによるボトルの破損を防止するための工夫です。
ふたつめは、斜め24度に張られたラベルです。
これは四角形にして前面幅が狭くなったボトルにブランド名を大きく表記するための工夫です。
同時に、一目で他のウイスキーとの区別できるという差別化戦略でもありました。
これらのユニークなアイディアにより、アレキサンダーはウイスキーの販売数量を劇的に拡大していきました。
ラインナップを”色“で表現
三代目のジョージとアレキサンダー二世の兄弟の時代に、さらに2つのイノベーションが起きました。
ひとつは、自社商品のラインナップを”色“で表現したことです。
ジョージとアレキサンダー二世は自社のブランドを、創業者である祖父ジョン・ウォーカーの愛称から「ジョニー・ウォーカー」と名付けました。
あわせて、すでに一定の知名度を得ていた2つの主力商品の名前を「ジョニーウォーカー レッドラベル」と「ジョニーウォーカー ブラックラベル」へ変更しました。
商品名を変えることは大きな決断でしたが、この”色”で表現するアイディアは、言語に関係なくラインナップを認識してもらえるという意味で普遍性が高く、ジョニーウォーカーの全世界への普及・定着に大きく貢献しました。
世界一有名な英国紳士「ストライディングマン」
もうひとつは、誰もが知るボトルに描かれた英国紳士の誕生です。
シルクハットと赤いテイルコート、ステッキを片手に歩く男性は、洒落者として知られていた創業者ジョン・ウォーカーの在りし日の姿であると言われています。
このキャラクターは「ストライディングマン」と呼ばれ、その颯爽と歩む姿は、現在も謳われているブランドメッセージ“Keep Walking”を見事に表したデザインであるといえます。
・ 他蒸留所の原酒をブレンドするという試み
・ 生産と流通を拡大させたアイディア
・ 様々なブランド強化の施策
これらを積み重ね、ジョニーウォーカーは世界一のスコッチブランドへ辿り着いたのです。
様々な大衆文化に登場
ジョニーウォーカーはその人気から、様々な文学、映画、音楽作品に登場しています。
日本において一番有名なのは、おそらく村上春樹の「海辺のカフカ」に登場する“ジョニー・ウォーカーさん”ではないでしょうか。
実際はウイスキーのジョニーウォーカーとは何ら関係のない男ですが、誰もが知っているアイコンとして「ジョニーウォーカー」の名前と姿を借りている、と語っています。
そこにいるのは黒いシルクハットをかぶった、長身の男だった。革張りの回転椅子に座り、身体の前で脚を組んでいる。裾の長い真っ赤な細身の上着を着て、その下に黒いヴェストを着て、黒い長靴をはいていた。
ウィスキーを嗜む人なら一目見てわかるんだが、まあよろしい。私の名前はジョニー・ウォーカーだ。ジョニー・ウォーカー。世間のだいたいの人は私のことを知っている。自慢するんじゃないが全地球的に有名なんだ。
村上春樹著『海辺のカフカ』
また音楽のジャンルでは、個人的にはエリオット・スミスの楽曲『Miss Misery』の一節が印象に残っています。
I‘ll fake it through the day with some help from Johnnie Walker Red
(今日一日をやり過ごす、ジョニーウォーカー レッドラベルの助けを借りて・・)
エリオット・スミス『Miss Misery』
世界№1ブランドであるジョニーウォーカーは、様々な大衆文化にも影響を与えています。
ジョニーウォーカーの種類と価格
ジョニーウォーカーはラベルの色でラインナップを分けており、主なラインナップは以下のとおりです。
多種多様なラインナップを揃えるジョニーウォーカーは、初心者から上級者まで幅広く楽しめる銘柄です。
初めてトライする方は、まずは最もポピュラーな「レッドラベル(通称:ジョニ赤)」と「ブラックラベル(通称:ジョニ黒)」から試してみることをおすすめします。
なお、ジョニーウォーカーの主要ラインナップの詳細については、以下の記事で紹介しています。ぜひあわせてご覧ください。
まずはこれから その1
ジョニーウォーカー レッドラベル
≪特徴≫
ジョニーウォーカーのスタンダードボトルであり、最もリーズナブルな一本。
ジョニーウォーカーの名を世界に広めた先駆的なブレンデッドウイスキーであり、フルーティな甘みとスモーキーな余韻を併せ持つジョニーウォーカーの基本形といえる銘柄です。
≪味わい≫
フレッシュなリンゴや洋ナシのようなフルーティな甘みとバニラのメロウなコク、ジョニーウォーカーの特長であるスモーキーな余韻
まずはこれから その2
ジョニーウォーカー ブラックラベル12年
≪特徴≫
29種のシングルモルトを含む多様な原酒をブレンドした贅沢なボトル。ウイスキー愛好家からは「ジョニ黒」の愛称で親しまれ、専門家からも「ブレンデッドの傑作」と評される一本。
12年熟成による熟成感はありつつもクセが少なく、ウイスキー初心者にもおすすめ。
≪味わい≫
バニラの甘み、オレンジやレーズンといったフルーツなど、多様で複層的な香りと味わい
初めてトライする方には、レッドラベルとブラックラベルのセットで飲み比べもおすすめです。
おわりに
今回は“世界№1スコッチウイスキー” 「ジョニーウォーカー」を紹介しました。
わかった気になっていただけましたでしょうか?
実際に嗜んでみてわかることもたくさんありますので、興味を持っていただいた方はぜひお試しください。
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